WD Caviar Green 3TB (WD30EZRX)
もはやプラッタの大容量化はHDDの性能向上にはつながらない
現時点において最大容量のHDD データ倉庫用としての基本性能は十分すぎるほどに高い
WD20EARXより目立つシーク音 750G/プラッタ・S-ATA3.0対応のメリットはない
最新の750GB/プラッタを採用した3TBのHDD「WD WD30EZRS」もデビュー当初¥25,000以上していたものが現在では¥10,000を切る価格で販売されるようになり、ここにきていよいよ3TB HDDも本格的な普及の兆しを見せつつあります。
今回のレビューは今春発売された大容量HDDのデファクトスタンダードモデルの「WD WD20EARX」と簡単に比較・検証してみました。
なおWD20EARXのレビューの内容と重複する部分についてはベンチ等の比較・検証を省略しておりますので、下記の関連レビューと合わせてご覧いただければ幸いです。
★関連レビュー★
倉庫用途のHDDにS-ATA3.0対応のメリットはあるのか?(WD Caviar Green 2TB 「WD20EARX」)
★製品概要★
●WD WD20EARX-00MVWB0(667GB/プラッタ×3枚構成・5,000rpm・64MBキャッシュ・Advanced Format)
(消費電力スペック=標準動作 4.5W ・アンロードアイドル 2.5W ・スタンバイ 0.7W ・スリープ 0.7W )
●WD WD30EZRX-00MVWB0(750GB/プラッタ×4枚構成・5,400rpm・64MBキャッシュ・Advanced Format)
(消費電力スペック=標準動作 6.0W ・アンロードアイドル 5.5W ・スタンバイ 0.8W ・スリープ 0.8W )
いずれのHDDも省電力・低騒音志向の「Caviar Green」シリーズのHDDで、WD20EARXおよびWD30EZRXはS-ATA3.0対応となっています。
★製品外観★
WD20EARXとWD30EZRXはプラッタ構成が異なり、筺体・メカ部も含めてまったく別設計のHDDとなっています。
裏面を見てみると基板は両機種とも「2060-771698-002」で共通ですが、メカ部は軸受け部分をはじめとして明らかな違いがあります。
★RMA保証★
今回TSUKUMOで購入したWD20EARX・WD30EZRXはともに3年間のRMA対象製品でSeek扱いの製品でした。
★発熱・騒音★
アイドル時およびHD Tune実行時の温度および消費電力を比較してみました。
【測定結果】
●WD20EARX-00MVWB0
・アイドル時 =36W(31℃)
・HD Tune実行時=44W(35℃)
●WD30EZRX-00MVWB0
・アイドル時 =37W(33℃)
・HD Tune実行時=46W(38℃)
※消費電力はワットチェッカー、HDD温度はHD Tuneから取得
アイドル時・ロード時の温度についてはWD30EZRXが2℃高くなっていますが、回転数を抑えた省電力モデルということもあってロード時の温度上昇はアイドル時比で+4~5℃といったところで十分に低い温度に保たれています。
また消費電力についてもアイドル・ロード時ともにWD30EZRXが1~2W高いですが、今回の比較・検証においては上述のメーカー公表値ほどの差は出ませんでした。
★稼動音★
WD20EARS・WD20EARXはともに667GB×3枚構成のプラッタ構成の共通のメカ部であることから両機種とも非常に静かで騒音が気になるようなことはありませんでしたが、WD30EZRXはその2機種と比べると若干ノイズが大きく低音のゴリゴリといったシーク音が若干耳につく印象を個人的には持ちました。(動画をご覧下さい)
ただケースに収納した状態ではWD30EZRXも騒音が気になるようなことはなく、実用上は問題ないように思われます。
★ベンチ結果 データ★
速度面での性能を比較するために定番のベンチである「HD Tune」「Crystal Disk Mark」そして「HDDRpmEst」のデータを取ってみました。(画像1・2)
◎WD WD20EZRX-00PASB0◎
【HD Tune】
Transfer Rate Minimum : 49.9 MB/sec
Transfer Rate Maximum : 127.5 MB/sec
Transfer Rate Average : 96.3 MB/sec
Access Time : 16.6 ms
Burst Rate : 279.3 MB/sec
CPU Usage : 1.4%
【Crystal Disk Mark 3.0】
Sequential Read : 129.7 MB/s
Sequential Write : 128.5 MB/s
Random Read 512KB : 45.44 MB/s
Random Write 512KB : 63.79 MB/s
Random Read 4KB : 0.536 MB/s
Random Write 4KB : 0.814 MB/s
Random Read 4KB QD32 : 0.529 MB/s
Random Write 4KB QD32 : 0.737 MB/s
(Test Size : 1000 MB)
====== HddRpmEst v0.1.5 === 結果レポート =====================================
対象 HDD : WDC WD20EZRX-00PASB0 WD-××××××××××××
回転数(推定) : 5000 rpm
平均アクセスタイム : 17.0 msec
同上(先頭10%の領域) : 10.8 msec
転送速度(外周,最大) : sustained 133.9 MB/s / burst 152.6 MB/s = 87.7 %
転送速度(外周,平均) : sustained 129.8 MB/s / burst 147.9 MB/s = 87.8 %
転送速度(内周,平均) : sustained 56.8 MB/s / burst 64.8 MB/s = 87.7 %
転送速度(内周,最小) : sustained 53.9 MB/s / burst 61.4 MB/s = 87.8 %
内外周比(平均,最大小) : 43.8 %, 40.3 % / 43.8 %, 40.2 %
備考 : 外[29/29,v0.12,a0.96]内[18/18,v0.17,a0.94]
------------------------------------------------------------------------------
◎WD WD30EZRX-00MMMB0◎
【HD Tune】
Transfer Rate Minimum : 54.2 MB/sec
Transfer Rate Maximum : 132.3 MB/sec
Transfer Rate Average : 98.0 MB/sec
Access Time : 15.1 ms
Burst Rate : 254.1 MB/sec
CPU Usage : 1.5%
【Crystal Disk Mark 3.0】
Sequential Read : 126.7 MB/s
Sequential Write : 125.0 MB/s
Random Read 512KB : 45.94 MB/s
Random Write 512KB : 63.42 MB/s
Random Read 4KB : 0.546 MB/s
Random Write 4KB : 0.877 MB/s
Random Read 4KB QD32 : 0.509 MB/s
Random Write 4KB QD32 : 0.912 MB/s
(Test Size : 1000 MB)
====== HddRpmEst v0.1.5 === 結果レポート =====================================
対象 HDD : WD30EZRX-00MMMB0 ××××××××××××××
回転数(推定) : 5400 rpm
平均アクセスタイム : 18.8 msec
同上(先頭10%の領域) : 12.1 msec
転送速度(外周,最大) : sustained 139.4 MB/s / burst 156.9 MB/s = 88.8 %
転送速度(外周,平均) : sustained 123.1 MB/s / burst 138.8 MB/s = 88.7 %
転送速度(内周,平均) : sustained 86.3 MB/s / burst 97.6 MB/s = 88.4 %
転送速度(内周,最小) : sustained 83.1 MB/s / burst 94.3 MB/s = 88.1 %
内外周比(平均,最大小) : 70.1 %, 59.6 % / 70.3 %, 60.1 %
備考 : 外[29/29,v0.32,a0.94]内[30/30,v0.12,a0.99]
★ベンチ結果 比較・検証★
●HD Tune
・HD TuneにおいてはWD20EZRXとWD30EZRXがTransfer Rateの数値でMaximumで約130MB/s、Averageで100MB/s弱とほぼ互角であり、accesstimeはWD20EARXの16.6msに対して15.1msとやや優れた結果となっている。
・AccessTimeはWD30EZRXが15.4msに対してWD20EZRXは16.6ms、BurstRateはWD20EZRXが279.3MB/sなのに対してWD30EZRXが254.1MB/sと同じS-ATA3.0対応機種にもかかわらず若干差がある。
●Crystal Disk Mark 3.0
・またテストサイズが50MBの条件ではWD20EARSとWD20EARXの間にかなり大きな差が付いていますが100MB・500MBと大きくなるにつれて差は縮まり、1000MBではシーケンシャルリード・ライト・ランダムリード・ライト(4kB・4KB QD)いずれの結果においてもほぼ同じ結果になる。
●HddRpmEst v0.1.5
・WD20EARXの回転数が5,000rpmなのに対してWD30EZRXは5,400rpmである。
・外周の転送速度は両機種ともほぼ同じだが、内周の転送速度はWD30EZRXが大きく上回っている。
・平均アクセスタイムはHD Tuneの結果とは逆にWD20EARXが速い結果となっている。
●ディスク間ファイルコピー
3.58GBのファイルをコピーした際の所要時間を計測してみました。
【コピー側として使用し計測(書き込み)】
◎WD20EZRX-00PASB0◎
・1回目=13分13秒
・2回目=13分12秒
・3回目=13分12秒
・4回目=13分15秒
・5回目=13分11秒
・平均 =13分13秒
◎WD30EZRX-00MMMB0◎
・1回目=13分15秒
・2回目=13分13秒
・3回目=13分12秒
・4回目=13分15秒
・5回目=13分16秒
・平均 =13分15秒
【マスター側として使用し計測(読み込み)】
◎WD20EZRX-00PASB0◎
・1回目=3分29秒
・2回目=3分27秒
・3回目=3分31秒
・4回目=3分27秒
・5回目=3分26秒
・平均 =3分27秒
◎WD30EZRX-00MMMB0◎
・1回目=3分29秒
・2回目=3分27秒
・3回目=3分26秒
・4回目=3分25秒
・5回目=3分27秒
・平均 =3分27秒
以上の結果をみるとWD20EARXに比べ若干優れた結果となっているベンチ結果もあるものの、両機種の性能にはあまり差がありません。
本来であればWD20EARXと比べてプラッタ容量が約12%アップしていることや400rpm高い回転数であることを考えると転送速度やアクセスタイムでもっと有利になっていなければならないのですが少なくとも結果としてはそうなっていません。
★大容量プラッタ採用HDDが抱える構造的な問題★
・プラッタ容量
プラッタ容量とは1平方インチ当たりに記録できるデータの容量数を表し、この数値が高いほど1つのプラッタで読み書きできるデータ数が多くなります。
このプラッタ容量が向上すると少ない回転数でも多くのデータを記録することが可能になることからHDDの大容量化に影不可欠の技術となっています。
プラッタ容量は線記録密度(ディスク面上の円周方向1インチに記録できるビット数)とトラック密度(同心円状に広がる帯「トラック」が1インチ当たり何本あるか)を掛け合わせることで求められます。
そして最近のプラッタ容量アップのトレンドはシーケンシャルの転送速度の向上につながる「線記録密度」の向上ではなくて、少ない面積により多くのデータを記録できる「トラック密度」の向上となっており、これが今回取り上げたプラッタ容量のアップが性能の向上につながらない主な要因となっています。
・キャッシュバッファ
トラック記録密度が上がるということは面積当たりのトラック数が増える=トラックの間隔が狭まることになり必然的にシーク回数が増えるのですが、シーク中はデータを読み込むことができないためできるだけこのシークを減らす必要があります。
「WD Raptorシリーズ」のようにディスクの回転数を上げることによって(10,000rpm)ある程度このシークタイムの短縮を図ることもできますが、ヘッダやピックアップレンズの移動にかかる時間の短縮には限りがあります。
そこでシーク動作、回転待ちにかかる時間をより小さくするために用意されたのが「キャッシュバッファ」です。
キャッシュ機能は、いわゆるメモリであるキャッシュバッファとファームウエアで構成されており、読み書きのデータはこのキャッシュに一時保管されます。
ホスト(PCのHDDコントローラー)がデータ読み出し要求を送った時、HDDはキャッシュバッファに該当するデータがあればそのデータをPCに転送し、無駄なシーク動作、無駄なメディアからの読み出し動作を省く仕組みとなっています。
WD30EZRXなど最近のHDDではこのキャッシュバッファを64MBなど大容量化して多くの読み書きのデータを蓄積し、キャッシュへのヒット率を高くすることによって無駄なシーク動作を減らしています。
・NCQ(ネイティブ・コマンド・キューイング)機能
またS-ATA2規格ではデータ読み出し要求(リードコマンド)を先に複数受け取っておき、回転待ちとシーク動作が最小になる順番にスケジューリングしながら読み出し処理を進めていく「ネイティブ・コマンド・キューイング(NCQ)」機能が新たに採用されています。
書き込み動作だけでなく読み出し動作に対してもドライブ内部で処理する順番を最適化できるようになり、無駄なシーク動作を減らすのに貢献しています。
このようにWD30EZRXをはじめとした最新の大容量HDDはシーク動作をできるだけ少なくするような様々な工夫がなされているほかヘッドの位置決めにも高い精度を実現するような構造になっています。
★S-ATA3.0対応のメリットとは★
S-ATA3.0とは主にSSDにおいて転送速度がボトルネックにならないよう 6Gbps(実効速度600MB/s)に引き上げた規格です。
HDDにおいてはS-ATA2.0の転送速度3Gbps(実効速度300MB/s)でもスペック上は十分なのですが、このWD30EZRXはこのS-ATA3.0対応機種となっています。
その効果はWD20EARXのレビューで比較・検証しましたが「HD Tune」のBurstRateや小容量条件のテストサイズにおける「CrystalDiscMark」のベンチ結果では差がつくものの、このHDDの主な用途であるデータ倉庫として実際に使用する場合においてはメリットを実感できるようなことはほとんどないように思います。
★AAM(自動騒音管理)による低騒音化★
AAMについてもWD20EARXのレビューで比較・検証した通り、データ倉庫用としての使用であれば性能のダウンも目だたないようなのでAAMを最小ノイズレベルに設定して使用したほうがメリットが多いように思われます。
ただし今回検証に使用したWD30EZRXはこのAAMに対応していましたが、WD20EARSと同じくロットによっては非対応のものが流通している可能性があるので注意が必要です。
※「S-ATA3.0対応によるメリット」「AAM(自動騒音管理)による低騒音化」についての詳細は関連レビュー
「倉庫用途のHDDにS-ATA3.0対応のメリットはあるのか?」(WD Caviar Green 2TB 「WD20EARX」)
をご覧ください。
★まとめ★
今回「WD20EARX」と比較・検証してみたのですが「WD30EZRX」の750GB/プラッタによる性能面でのメリットは残念ながら今回の比較・検証においてはあまり感じられませんでした。
しかしデータ倉庫用としての基本性能は十分すぎるほどに高く、実使用時において速度面で不満を感じることはまずないものと思われます。
また大容量HDDを複数台使用するような環境においては同容量においてHDDの数を減らすことができることから、発熱・消費電力の面においてメリットが期待でき「WD30EZRX」をはじめとした3TB HDDの導入は意味のあることだと思います。
電源においては「1Wあたりの価格」という指標について多少否定的な見解をしましたが、現在のHDD市場においては「1GBあたり単価」が販売シェアを大きく左右するのが事実です。
そういった意味において現在のHDD市場において「1GBあたり単価」が再安レベルであるWD20EARXに近ずいてきた「WD30EZRX」は本格的な普及にいよいよ弾みがついたといえます。
【検証環境】
OS:Windows7 HomePremium (64bit)
CPU:Intel Core i7-2600K(定格)
CPUクーラー:付属リテール
M/B:ASUS P8Z68-V PRO (Intel Z68)
MEM:Kingston KHX1866C9D3LK2/4GX(9-9-9-27@1333MHz・1.35V)
SSD:Crucial RealSSD C300 64GB
Drive:Pioneer DVR-J15S
電源:Abee ZE-750S
モニター:MITSUBISHI Diamondcrysta WIDE RDT231WM-S
69人中、68人のユーザーが、このレビューを「役に立つ」と投票しています。
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[データ更新日時:2012/05/17 13:20]
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